高齢者の交通事故に関するQ&A
- 今年で70歳になった母親が、車道と歩道の区別のない道路の左端を歩いていて、後ろからきた車両と接触し肩に怪我を負いました。
相手の保険会社からは、こちらに5%の過失があると言われています。
被害者が高齢者である場合に、特に気をつけるべきことはありますか?
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事故の過失割合は、長年の裁判例の積み重ねにより、事故の類型ごとにほぼ決まっています。
たとえば、ご質問の事故の場合、通常であれば歩行者の側に5%の過失があるとされています。
この点、高齢者が歩行中もしくは自転車の運転中に事故にあった場合は、交通弱者である高齢者の保護という観点から、被害者である高齢者の側に過失割合が有利に修正される場合が多いです。ここで言う高齢者とは、おおむね65歳以上の方です。
どういう事故の場合に、何%過失割合が修正されるか、ということも、ほぼ決まっています。
ご質問の事故の場合、70歳の被害者に5%過失割合が有利に修正されて、結局お母様の過失はゼロということになります。
保険会社は、最初から被害者が高齢者であることを前提として修正した過失割合を提示してくれる場合もありますが、そうでない場合もあります。なので、被害者が高齢者の場合は、一度弁護士に相談するなりして確認されることをお勧めします。
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69歳の父親と68歳の母親が、自動車を運転中、信号待ちで後ろから追突されて事故にあい、二人ともムチ打ちの怪我を負いました。
二人とも、6ヶ月程度整形外科に通院し、首の痛みが取れなかったため後遺障害の申請をおこなった結果、首の痛みについて14級9号の「局部の神経症状」の後遺障害が認定されました。
ここで、後遺障害が認定された場合、後遺障害が将来の仕事に与える影響を埋め合わせるお金である「後遺障害逸失利益(こういしょうがいいっしつりえき)」を請求できると聴きました。
この点、父親も母親も65歳で定年退職してからは年金暮らしで、事故の時点でも無職だったのですが、逸失利益を請求することはできるのですか? -
後遺障害逸失利益は、事故時点(事故の前年)の収入を基礎として計算するので、事故の時点で収入がなければ逸失利益もゼロとなるのが原則です。しかしこの原則には多くの例外があります。
まず、お母様については、事故の当時、お父様やお孫様のために炊事、洗濯、掃除、買い物などの家事をされており主婦であった、と言えるのであれば、主婦としての逸失利益を請求することができます。
主婦としての逸失利益は、年齢や学歴に関係のないすべての女性の平均賃金(年によって異なりますが例年350万円前後)を基礎として計算します。
次に、お父様の場合ですが、事故の時点で無職であったとしても、今後職業に就き収入を得る可能性がおおむね50%以上はあった、ということを根拠に基づいて言うことができれば、逸失利益を請求することができます。
この場合に基礎となる収入は、男性の年齢、学歴ごとの平均賃金となる場合が多いですが、お父様のそれまでの職歴や定年前の収入など個々の事情により異なります。
たまに、事故当時無職で収入がない場合でも、無条件に平均賃金を基礎として逸失利益が請求できると考えておられる方がいらっしゃいますが、事故の時点で収入がなかった場合は、原則的には逸失利益はゼロです。
今後収入を得る可能性が高かった、と言えて初めて平均賃金が使えるのです。
お父様の場合は、たとえば具体的に次の仕事が決まっていた、ある程度のところまで話が進んでいた、ということであればその仕事の収入を基礎として逸失利益を請求することができると考えられます。
他方で、実際問題今後仕事をする予定がなかった、という場合には、逸失利益を請求することは難しいものと考えられます。