当事務所の解決事例

2021.05.31

【No.122】13級8号認定の70代年金生活者の男性について、賠償金545万円の獲得に成功した事例

相談者:男性Fさん
職業:年金生活者
後遺障害の内容:13級8号

項目名 獲得金額
治療費 720,000円
看護料 330,000円
通院交通費 30,000円
入院雑費 140,000円
家屋改造費(浴槽手すり) 40,000円
入通院慰謝料 2,410,000円
後遺障害慰謝料 1,800,000円
後遺障害逸失利益 700,000円
合計 6,170,000円

 

背景

70代年金生活者の男性Fさんは、横断歩道を歩行して進行中、右折進行してきた四輪車に衝突される事故に遭いました。

Fさんは、救急車で総合病院に搬送され、骨盤骨折等の診断を受けました。Fさんは、搬送先の総合病院にそのまま入院、その後転院し、事故から通算3カ月間入院しました。退院後は、約1年2カ月間、整形外科に通院し、事故から約1年5カ月後に、症状固定となりました。

弁護士の関わり

事故の約1年4カ月後の段階でご依頼いただきました。

ご依頼後、程なくして、後遺障害の申請をおこなったところ、左下肢が右下肢と比較して1cm以上短縮した、ということで、13級8号の認定となりました。

上位等級の認定の可能性が無いか、ご本人と何度かやり取りしながら検討しましたが、可能性は低いということで、認定を受けた13級8号の後遺障害を前提に、賠償の交渉を開始しました。

当方からの請求に対する相手損保からの最初の示談提案では、慰謝料金額が裁判基準の80%などと低く算定されていた反面、逸失利益がある程度認められていました。

この点、Fさんは、事故時点で、お仕事を退職されて既に10年以上が経過しており、その後、町内会の役員などされておられましたが、収入の得られるお仕事には就いておられませんでした。

このため、交通事故紛争処理センターや訴訟となって、法律家の判断が入ると、実態を見られて逸失利益がゼロとされることが懸念されました。

ご本人と面談の上でこの点をご説明し、交通事故紛争処理センターや訴訟手続とはせずに、あくまで示談交渉の枠内で解決を図ることとしました。

再交渉の結果、慰謝料について、裁判をおこなった場合の100%の金額とする示談案を引き出すことができ、この金額で示談となりました。

所感

Fさんのケースでは、保険会社の示談提案では、後遺障害逸失利益が計上されていましたが、仮に交通事故紛争処理センターや訴訟となって法律家の判断となった場合には、逸失利益がゼロと判断されることが強く懸念されました。

すなわち、後遺障害逸失利益というものは、そもそも、後遺障害が、今後のお仕事に与える影響を埋め合わせるお金、のことです。

基礎となる収入に、等級ごとに定められている労働能力喪失率を乗じて、さらに、労働能力喪失期間、を乗じて算出します。

そうなりますので、後遺障害逸失利益が認められるためには、事故時点で収入があった、又は、仮に事故時点で収入が無くとも、事故さえなければ、収入を得る可能性が高かった、ということの証明が必要となります。

事故当時たまたま失業中であっても、それまでの職歴などから、就職して収入を得る可能性が高ければ、後遺障害逸失利益は認められます。他方、定年退職されて既に10年以上経っているような場合は、今後収入を得る可能性は低い、ということで、後遺障害逸失利益は認められないというのが基本的な考え方です。

交通事故紛争処理センターでは嘱託弁護士、訴訟では裁判官、という、法律家があっせん案や和解案を考えたり、裁定や判決を行ったりしますので、このように、実態を見られながら、実質的な考慮をされて、センターではあっせん案・裁定、裁判所では和解案・判決が出されます。

ただ、自賠責保険からの支払いや、保険会社担当者作成の示談案においては、事故当時収入の無かった方について、今後収入を得る見込み、という実態が見られずに、形式的に、平均賃金を基礎として後遺障害逸失利益が算出されることがあります。この場合には、後遺障害逸失利益、という点で見れば、交通事故紛争処理センターや裁判所に持って行かずに、示談で終わらせた方が、被害者にとって有利になる、ということになります。

Fさんのケースでは、本来支払われない可能性の高い後遺障害逸失利益についてはある程度の支払いを得ながら、慰謝料については訴訟をおこなった場合の100%の金額の支払いを得る、ということで、金額としては理想的な解決とすることができました。

交通事故の被害に遭われ後遺障害が認定されたものの、事故時点では収入が無かった、という方は、是非一度、当事務所にご相談ください。