当事務所の解決事例

2022.12.21

【No.185】12級3号認定の60代農業従事の男性について、賠償金402万円の獲得に成功した事例

相談者:男性Tさん
職業:農業
後遺障害の内容:12級3号(歯科補綴)

項目名 獲得金額
治療費 1,320,000円
通院費 5,000円
入通院慰謝料 1,510,000円
後遺障害慰謝料 1,800,000円
後遺障害逸失利益 705,000円
合計 5,340,000円

 

背景

60代農業従事者の男性Tさんは、普通貨物自動車、いわゆる軽トラを運転して公道を走行し、信号機で交通整理のされた交差点に差し掛かり赤信号で停車していたところ、後方から走行してきた普通乗用自動車に衝突される事故に遭いました。

Tさんは、事故の衝撃で車のハンドルに顔をぶつけて歯を6本折る怪我を負い、救急車で大学病院に搬送されました。その後、整形外科、眼科、歯科、接骨院に約11カ月間に渡って通院し、症状固定となりました。

弁護士の関わり

事故の約8カ月後にご依頼いただきました。

ご依頼後、しばらくの間治療継続いただき、症状固定となったため、後遺障害の申請を行ったところ、12級13号「7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの」の認定を得ることができました。

ただし、Tさんは、事故前から、3本の歯について欠損又は大部分が喪失していたため、14級2号「3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの」が既存障害としてあり、今回事故による後遺障害はこの加重障害とされました。

加重障害、とされると、慰謝料は最大でも12級290万円から14級110万円を差し引いた180万円、後遺障害逸失利益の算定に当たっての労働能力喪失率も、最大でも12級14%から14級5%を差し引いた9%とされます。

認定された後遺障害結果に基づいて示談交渉を開始したところ、示談交渉段階における相手損保の上限回答は、治療費等を除き300万円を支払う、というものでした。なお、この示談交渉段階の回答では、後遺障害による逸失利益は0とされていました。

Tさんと検討の上、これを不服とし、交通事故紛争処理センターへの申立をおこないました。

センターの手続においては、歯牙障害も、労働に影響を与えるため、逸失利益の損害は発生していることを主張しました。

結果として、後遺障害逸失利益につき、労働能力喪失率は3%と低めであるものの、基礎収入を年齢別学歴別平均賃金としつつ、労働能力喪失期間を平均余命の2分の1とした70万円という金額が計上され、全体として、既払い治療費を除き400万円の支払を得られる旨のあっせん案が示され、このあっせん案の金額で和解となりました。

所感

Tさんは、事故当時、農業で年間30万円程度の収入は得ていたものの、その他の仕事には就いておらず、農業収入以外は年金収入があるだけでした。

加えて、Tさんに認定された「歯が無くなった」という後遺障害は、一般的に、仕事や収入に影響を与えづらいと考えられていることから、逸失利益が認められにくい後遺障害の類型でもあります。

これらの事情から、示談交渉段階での相手損保の回答では、後遺障害逸失利益はゼロとされていました。

この相手損保の回答は、一見、もっともらしいようにも思えます。ただ、仮に現時点で収入が無くとも、将来的に収入を得られる見込みを証明できれば、逸失利益は認められますし、歯牙障害のような後遺障害でも、逸失利益が認められる可能性は十分あります。

このように、後遺障害逸失利益は、必ずしも、等級表通りの労働能力喪失率を前提として認められるわけではない反面、収入が無いから、労働に影響を与えないから、と言って、直ちにゼロ、とされるわけでもありません。

交通事故に遭われお怪我をされ、後遺障害が認定されたという方は、是非、当事務所にご相談ください。