入院・通院時の損害賠償

交通事故に遭って怪我を負い、怪我の治療のために入院や通院が必要になった場合、交通事故被害者は治療費や装具代などの治療に必要な費用や、入院・通院によって仕事を休んだり遅刻、早退する必要が生じ、現実に収入が減少した分の補償などを請求することができます。

ここでは、入院・通院時に発生する主な損害とその賠償金額についてご説明いたします。

  1. 治療関連費
  2. 休業損害
  3. 入通院慰謝料

治療関連費

治療関連費としては、事故によって受傷した怪我の治療費・入院費、また、通院に関る交通費などがあります
治療費は通常であれば全額が保険会社から通院している病院や接骨院に直接支払われ、被害者は負担する必要はありませんが、過剰診療や高額診療などの場合においては、一定額以上の支払がなされない可能性があります。

また、入院費についても同様で、入院費は一般病棟の室料が基準となっているため、個室を希望し室料が高額になってしまった場合であっても、原則として一般病棟の室料を基準とし計算された室料が支払われます(個室にしたことによる増額分は被害者自身の負担になります)。
しかし、例えば重篤な症状で入院する場合や、他に病室の空きがなかったという場合のように、個室を利用する必要性があったと認められる場合においては、室料全額を請求することが可能です。

治療費が支払われるのは、怪我が完治するまで、もしくは、怪我がこれ以上はよくならない、これ以降は日にち薬ということで様子をみていくしかない、という症状固定(しょうじょうこてい)の状態に至るまでです。
怪我が完治したかどうか、症状固定に達したかどうか判断するのは、当然のことながら保険会社の担当者ではなく、基本的には治療を担当している主治医です。
なので、主治医がまだ治療が必要であると言っているにも関わらず、保険会社が治療費の支払いを打ち切ろうとしてきた場合には、まだ治療が必要である旨の主治医の意見書等を提出し、治療費の支払継続を求めていくことになります。

通院に関しては、通院するのにかかった電車やバス、タクシーなどの料金を請求できます。
しかし、タクシーの代金を請求できるのは、例えば被害者のお住まいの交通の便や、怪我の症状などで公共交通機関を利用することが容易ではない場合等、タクシーを利用する必要性が認められる場合に限られます。

また、自家用車を利用して通院した場合においては、通院にかかったガソリン代金(1km15円で計算されます)、駐車場の代金、高速道路を利用した場合(高速道路を利用することが相当と認められる場合)は高速代金などを請求することができます。

休業損害

休業損害とは、交通事故によって怪我を負った被害者が、入院期間、通院期間に仕事を休んだことにより、現に減少した収入を埋め合わせるためのお金です

休業損害は、基本的には、事故前3カ月間の収入の1日当たりの平均金額に、休業日数をかけあわせて計算されます。
ただ、休業すれば必ず支払われるわけではなく、休業した日のうち、休業の必要性があると認められる期間についてのみ支払われます。
休業の必要性の判断に当たっては、基本的には主治医の意見が尊重されます。
ただ、症状によって、判例上および実務上休業期間のだいたいの上限が決まっている場合もあり、例えばむち打ち症であれば休業の必要性が認められる期間の上限は約3カ月間となります。

収入が減少しなくても、有給休暇を使って入通院した場合には、有給休暇の分が休業損害として補償されます。
これは、有給休暇には財産的価値が認められているためです。

休業損害という名称ですが、主婦や求職中の方でも休業損害を請求することは可能です

休業損害は、職業によっても違いがありますので、詳細は弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

入通院慰謝料

入通院慰謝料は、事故によって被害者が病院に入通院せざるを得なくなったことによる精神的苦痛を埋め合わせるために支払われる慰謝料です

注意しなければならないのは、この慰謝料計算においては
 ①自賠責保険基準
②任意保険基準
③裁判基準

という3つの基準が存在する点です。
①の自賠責保険基準では、入通院慰謝料は、実際に治療を受けた日数の2倍、治療期間の日数、のいずれかの少ないほうの日数に4200円をかけあわせて計算されます。
弁護士が示談交渉をおこなう場合に用いる③の裁判基準では、実際に治療を受けた日数ではなく、治療期間の日数を基礎として慰謝料を計算するのが原則です。
なので、週3回病院にいくか、週4回病院にいくかで慰謝料の金額は通常は変わりません。

弁護士が入らない場合、保険会社は一般的に、自賠責保険基準、あるいは任意保険基準のいずれかを用いて計算をしているのですが、裁判所の基準と比較した場合には低額になるのが通常です

適正かつ最大の賠償金の支払いを受けるためにも、弁護士にご相談されることをお勧めします。